ヨーロッパに旅に出ると、宮殿やお城、博物館などに見られるような、昔から残る伝統的なインテリアや、ホテルやレストランなどで見られるようなモダンなインテリアなど、場所によってまったく表情の違った個性的なインテリアを楽しむことが出来ます。
ヨーロッパにおけるインテリアは美術や建築と同様に、その当時の社会情勢や流行を反映して変化してきた大きな要素の一つでした。
国によって、流行していた様式や名称に多少の違いはありますが、今回は、今日でもインテリアデザインのインスピレーション源となっていて、ヨーロッパの国々を訪れた際に見ることができる有名な 11のスタイルについて、簡単にご紹介していきます。
建築の歴史と合わせて読むと、変遷がよりわかりやすいかと思いますので、気になる方は建築の歴史の記事についても読んでみてくださいね。
インテリアの歴史と様式のまとめ
クラシシズム – 古典主義 (Classicism)
17-19世紀に見られたクラシシズム(古典主義)とは、それまでのバロックやロココ様式の華美なデザインに反動する形で現れた、古代ギリシャやローマのデザインを取り入れたスタイルのこと。
幾何学的なフォーム、やや抑えられた装飾に自然石やシルクなどの高価な素材を使用しているのが特徴です。
ロンドンでは、Sir John Soane’s Museumがクラシシズムを象徴する建築で、ウェブサイトでも建物内の装飾などが見られるので、ぜひチェックしてください。
アーツ・アンド・クラフツ (Arts & Crafts)
アーツ・アンド・クラフツは、大量生産の安価な同一製品が広く出回った産業革命のあり方に批判する形で、イギリス人デザイナーのウィリアム・モリスが中世の手工業の復興を唱えたことを発端に広まり、1810 – 1910年という短い期間ではあったものの、後世に多大な影響をもたらしたスタイルです。
アーツ・アンド・クラフツのインテリアの特徴は、職人技と自然素材によって生み出された温かみのある雰囲気で、ロンドンでいうと老舗デパートとして、またリバティプリントとして親しまれているリバティの建物がその一つです。
また、ウィリアム・モリスが青年期に過ごしたがウィリアム・モリスギャラリーがロンドン東郊外に残っており、そこでは彼のコレクションなどを鑑賞することができます。
ウィリアム・モリスとフィリップ・ウェッブがデザインし、アーツ・アンド・クラフツ運動の拠点となったレッドハウスもロンドンの南東部に現存し、彼らがこだわり抜いた建築や家具を存分に堪能することができるのでおすすめです。
アール・ヌーヴォー (Art Nouveau)
アール・ヌーヴォーは1890年から1910年にヨーロッパとアメリカで流行したスタイルで、これまで主流であった古典主義に反して、生活の中にアートやデザインを取り入れることをより重視するようになりました。
イギリス発祥のアーツ・アンド・クラフツや日本の木版画などの影響を受け、フランスで生まれたこのスタイルは、有機的な曲線と花や植物などから着想を得たデザインが特徴です。
一方で、スコットランドのデザイナー、チャールズ・レニー・マッキントッシュは、アール・ヌーヴォーの概念を独自の視点で解釈し、動物や野菜をイメージし、縦長の直線的なラインを使用したデザインをインテリアに取り入れていきました。
アール・デコ (Art Deco)
アール・デコは、1925年のパリで開かれた「現代装飾芸術・工業美術国際博覧会」で注目を集めたデザインが、インテリアにも派生して生まれたもの。
それまでのアール・ヌーヴォのスタイルに、工業化によって生み出されたデザインが組み合わさったモダニズム初期のデザインで、1920年代にブームとなりました。
ゴールドなどの濃い色や、幾何学模様が好んで使われ、エジプトアートの影響を受けた豪華な装飾が特徴です。
また、クロムや漆、ベークライト、ミラーなど、その時代には新しい素材を用いた装飾も見どころの一つ。
ロンドン南部にあるエルサム宮殿は当時そのままのアール・デコインテリアを見ることができるおすすめスポットです。
モダニズム (Modernism)
モダニズムは第一次・第二次世界大戦後の芸術やアートにおける新しいスタイルの総称です。
それ以前の豪華な装飾を施したインテリアデザインは衰退し、産業革命によって一般的になった鉄やガラスなどの素材を利用しながら、シンプルなラインやフォームによるミニマリズムなデザインに大きなガラス窓が導入され、室内外のつながりが強調して演出されています。
ヴァルター・グロピウス、ミース・ファン・デル・ローエ、ル・コルビュジエ、フランク・ロイド・ライトは、モダニズムムーブメントの火付け役となった4大建築家として知られています。
アバンギャルド (Avant Garde)
アバンギャルドは、伝統的で慣例的な考え方を打ち破りたいという20世紀初頭の若者たちの願望を象徴した、明るくて大胆なデザインが特徴です。原色や対照色を使用して空間をダイナミックに表現しています。
また、ガラス繊維や、装飾石膏、メタリックカラーの壁紙、ラミネートカバーなど、これまでインテリアに使用されなかった素材が実験的に取り入れられています。
1989年にハンガリー人建築家アンティ・ロバガ氏がデザインした南フランスにあるこのバブル・ハウスは(下画像)は、自由な想像力から生まれた独創性の高い芸術的表現を見ることが出来ます。
発泡スチロールやポリエステルなどの素材も取り入れ、ユニークな形を作り出しているのが特徴です。
シュルレアリスム (Surrealism)
スペインの画家、サルバドール・ダリを筆頭に20世紀のアートシーンでムーブメントとなったシュルレアリズムは、人間の心の中にある無意識の世界と夢の世界を表現したもの。
そのスタイルが、アメリカのデザイナー、ケリー・ウェスラーによってインテリアデザインに表現されています(下記画像)。
ケリー・ウェスラーは私も大好きなデザイナーの一人で、とくに彼女のデザイナーズ家具の使い方や、色の使い方、一つの空間にさまざまなパターン(模様)を使っていても統一感を上手に生み出しているテクニックはとても参考になります。
私はMaster Class(それぞれの分野で一流の講師を招き、オンラインコースを提供する米国発のプラットフォーム)で彼女のオンラインクラスを取りました。彼女のインスタグラムもアイディアの参考になります。
インテリア本が日本のアマゾンでも売っているので、興味があったらそちらもチェックしてみてください ね。
Kelly Wearstler: Evocative Style
エクレクティシズム (Eclecticism)
エクレクティシズムとは日本語では折衷主義の意で、古いものと新しいものを組み合わせたり、他の世界各国で見られるデザインを取り入れたりと、様々なデザインをいいとこ取りして生みだされたインテリアのことを言います。
下の画像は、フランスのインテリアデザイナー、マドレーヌ・カスタンによってデザインされたエクレクティックインテリアです。
北欧 – スカンディナヴィアン (Scandinavian)
スカンジナビア様式は、1930年代にデンマーク、ノルウェー、スウェーデン、フィンランドで生まれたスタイルで、シンプルでミニマム、かつ機能的なデザインにより毎日の生活を豊かにすることを追求したスタイルです。
デザイナーのアルヴァ・アアルト、ハンス・アルネ・ヤコブソン、ヴァーナー・パントンらによって始まりました。
イタリアンスタイル (Italian Style)
イタリアンスタイルはクラシック、エレガントでありながら、クリエイティブなエッジを取り入れたモダンでエキゾチックなデザインです。
ジオ・ポンティ、エットレ・ソットサス、ピエロ・フォルナセッティなどのデザイナーがこのスタイルに挙げられます。
プレイリースタイル – 草原様式 (Prairie Style)
アーツ・アンド・クラフツ運動の理念とデザインの美しさに共鳴して生まれたプレーリースタイルは、アメリカ中西部の大量生産の反動する形で、20世紀初頭にフランク・ロイド・ライトによって生まれました。
手工業を取り入れ、オープンプランのリビングを導入しているのが特徴です。
フランク・ロイド・ライトは日本の幾何学的でシンプルなデザインから着想を得たといいます。
いかがでしたでしょうか?インテリアのスタイルや歴史を少しでも知っておくと、今日に見られるインテリアデザインをより一層親しみを込めて鑑賞できるような気がします。
イギリスの建物を巡ると、さまざまな場所で伝統的な建築に出会うことが出来、その度にタイムスリップしたような不思議な感覚になります。
日本でヨーロッパのインテリアが見られる場所を色々探してみてもいいかもしれないですね。