今回は長期旅行中の滞在先選びについて少しだけ話したい。その上で、せっかくなので、3週間滞在していたミラノの話を例に取り上げる。
もしこれまでの記事を読んでいない方がいたら、流れをつかむためにもぜひそちらもご覧いただきたい。
【イタリア旅行記①】アートに酔い痴れる、オトナになってしたいイタリアひとり旅について語る – 序章
【イタリア旅行記②】ベッド購入。ベネチア人の家に転がり込んで始まった予期せぬ共同生活
【イタリア旅行記③】モネを魅了したベネチアの世界で油絵を描く朝
【イタリア旅行記④】ベネチアの美しいアトリエとチャーミングな職人&アーティストたち
滞在先はAirbnbで選んだ。詳しくは後で説明するが、長期旅行の場合は、Airbnbを多く活用している。
ミラノのAirbnbは、部屋を予約した後にわかったが、ホストが日本に1年間語学留学をしたことがあるイタリア人(厳密に言うともっと色々血が混ざっている)で、イタリア語、日本語以外に英語、フランス語を流暢に話すユダヤ教一家に生まれた50代のゲイの人だった。この時点で私にとってはいろいろ興味深い。
ベネチアからミラノに長時間移動の末、夜の9時頃に到着し、かなり疲れ切っていたから、すぐにベッドで休もうと思っていたが、彼と会った瞬間から意気投合して、気付いたら深夜の12時まで語り続けた。
私が長期旅行でなぜAirbnbやB&Bで滞在し、現地の人と同じ場所に住むことを選んでいるかというと、コストがかかる長期旅行で金額を抑えられるということもあるのだが、何よりも現地のよりリアルな生活や現地の人しか知らない情報をホストの人から教えてもらえることにとても大きな魅了を感じているからである。
基本的に私はAirbnbで滞在したほとんどのホストと仲良くなって、いまでも連絡を取り合ったりする仲の人も数少なくない。とくにこちらもある程度大人として旅をしていて向こうも大人だから、その後友達になる可能性が学生や20代の時の旅行よりも多い。
短い期間でも誰かと同じ時間をシェアすることは、特別な海外旅行の時間をより濃密にしてくれて、ホテルなどに泊まるよりも、あとになって良い思い出として残っていることが多い。(もちろん、ホテルに滞在してラグジュアリな体験をするのも好きだけれど)
また長期で旅をしているときは外食が続きすぎると私は胃がもたれてきてしまうので、キッチンがあるAirbnbを選ぶ、というのも一つの理由だ。
現地の生活スタイルを知ることは思っている以上にすごく面白くて、例えば部屋の仕様から使っているキッチン用品の使い方まで違うし、玄関の開閉の仕組みだって違うし、とにかくそういった色んな”違い”から新しいインスプレーションを得たりできるものだ。
イタリアで現地の人と一緒に過ごして、学んだことの一つがコーヒーの淹れ方だった。イタリア旅行中、色んな場所を転々と滞在したが、それぞれのホストに一つだけ共通していたことが、毎朝コーヒーを飲む生活文化だった。
そのゲイのイタリア人ももちろんその一人で、イタリアの直火式エスプレッソメーカーで毎朝コーヒーを淹れていた。
朝目が覚めると、コーヒーの香りがキッチン中に広がっていて、朝の忙しい時間も贅沢な気分にさせてくれた。もともと私は全くコーヒーへのこだわりなんて何もなかったけれど、彼らの影響で、3ヶ月の旅の終わりには一杯のコーヒーを飲んで一日をスタートする習慣ができていた。
このイタリア長期旅行を通して、私がイタリア人に対して抱いた印象は、伝統というかこれまでの慣習を強く重んじているイメージで、それがたとえ便利でなかったとしても、昔から代々変わらず続けていることを誇らく思っているということだった。それが食生活にしかり、住居にしかり。(それが外者にとっては柔軟じゃないから不便と感じることもあるかもしれないが)そうした文化を重んじるイタリアの風習は私が住んでいるイギリスでそれほど感じることはなかった。これは、どっちが良いか悪いかという話ではなく、そんな新しいものに振り回されることなく、慣習を大切にしながら彼ら独自の時間やスタイルを大切にする心の持ち方は、私にとってこの旅行での一つの学びだった。
話はもとに戻るが、ミラノの彼は本当に私に優しくしてくれた。平日に部屋で仕事をする必要があることを伝えたら、私のことを気に入ったからといってデスクを買ってくれたし、毎日ミラノのおすすめのスポットを送ってくれて、行き先をプランニングしてくれた。
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ほかにも彼のはからいで、ミラノで活躍する日本人のファッションデザイナーの人や、ドイツから移り住んだプロダクトデザイナーたちとのディナーやパーティーに混ぜてもらったりして、その人たちからもミラノの暮らしや仕事について色々話をきくことができたとても面白かった。
そのホストとはとにかく滞在中たくさん話した。特に彼は思ったことは包み隠さずストレートに言ってくれたので、自分がモヤモヤと悩んでいた人生のこととかも気持ちのいいくらい一刀両断で答えてくれた。わたしが滞在中にミラノで出会った人とデートしたことも楽しく話していたし、本当に彼とは四六時中話は尽きなかった。
そして彼は創価学会に入っていて毎朝念仏を唱えていた。週に一度、同じ創価学会の友人を家に招いて夕方にお経を唱えていたりもした。ちなみにだが、フィレンツェで泊まったホストの人も創価学会の人で、朝、念仏を唱えている声が小さく聞こえてきた。イタリアでの創価学会の広まりを感じる不思議な体験ではあったが、こうした予期していなかったことも含めて旅は面白いものだと思っている。
そして、ミラノ滞在も残り僅かになってきていたとき、彼の姉妹に会いに、彼のお母さんと一緒にコモ湖に行くから一緒に来ない?と誘ってくれた。コモ湖は話に聞いていたからすごく行きたかったものの、なかなか一人で行くのを億劫にしていたところだったので、すぐに行きたい!と答えた。彼のお母さんはフランス人で、姉妹含めて皆、外見も内面も驚くほどに美しかった。
その帰りに彼は私にひとつの袋を手渡した。それは、私と良い時間を過ごすことができたからといって用意してくれたギフトで、私達がコモ湖で別行動をしていたときに彼が買ってくれたものだった。彼のお陰で一人で旅をしていては味わえなかったであろう濃密な時間をミラノで過ごさせてもらったし、彼がそんな形で最後にギフトをくれたことは私にとってとても意味のあることだった。
そしてミラノを去る最後の日に、私もお礼としてちょっとしたギフトを彼と彼のパートナーにあげた。(彼のパートナーはシャイだがとても素敵な人だった)
3週間の滞在を経てすっかり親友になった私達は、わたしがロンドンに戻った今でも何かあれば電話して話したりしている。(というか一方的にいつも私の話などを聞いてもらっている)
ちなみに今回はミラノのことを例として取り上げたが、これがこの後続くシエナやフィレンツェの滞在先でも、ホストの人たちとディナーやランチを一緒にさせてもらったりして、とても思い出深い時間を送らせてもらった。シエナの滞在先では、料理好きなイタリア人弁護士がレストランに出てもおかしくないくらい美味しいディナーとワインで私をもてなしてくれたし、彼は車でArezzoにも連れて行ってくれた。フィレンツェではAirbnbではなくあえてホームステイの選択肢を選んだのだが、フィレンツェ出身の建築家の夫婦たちと、その友人たちを囲んで、彼らの豪華なイタリアンインテリアに囲まれながらホームメイドの食事と会話を楽しんだ。
これまでに他のどこかの記事でも書いていたかと思うが、私の人生をより華やかで有意義にしてくれるのは、素敵な人たちとの出会いだと思っている。
新しい人達との出会いの中で、常に私はインスパイアされるし、それが自分のアート制作だったり、自分の生き方に反映させられている。
もしこの記事を読んでくれている人の中で、私は人見知りだからそんな事ができないっていう人もいるかもしれないけれど、私はそんなの気にする必要はないと思う。
それは、すべてはいかに相手に対して興味を示すか、そして違う文化を受け入れて、知りたいと思う気持ちを持つかにつきると私は思うからだ。
ホストたちと会話をする上で、英語はもちろん喋れるに越したことはないが、英語圏でさえなければ、知りたいという気持ちさえあれば、最終的にはカタコトでもどうにかなる(英語圏だと喋るのが早くてついていけない可能性があるから)。ちなみに私が英語をどのように勉強したかについてはいくつかの記事でまとめているので、English Tipsのページに飛んでみてほしい。
特にAirbnbやB&Bなどでホストをしている人は、新しい人との出会いや違うカルチャーを学ぶことに楽しみを感じて客人を迎え入れているケースが多いから、現地の友だちが全くいないが、誰かと仲良くなってみたいと思っている海外旅行初心者の人がいるとしたら、Airbnbはとてもおすすめの方法である。
日本人が運営する滞在先はなるべく避けて、ぜひ現地のサークルの中に積極的に入っていって自分の価値観を変えてくれるような話をたくさんしていってほしいと思う。
それでは今日はこの辺で、また次の記事でお会いしましょう。
最後に。もし時間があったら、My Artからイタリアでの絵などぜひ見てみてくださいね。