↑ 油絵 Oil on Canvas by Satomi (Me)
上以外の絵画もMy Artで是非チェックしてみてください。
今回のイタリア旅行記も引き続きベネチア編。
今までのイタリア旅行記の記事を見ていなかったらそちらを先にご覧いただきたい。
【イタリア旅行記①】アートに酔い痴れる、オトナになってしたいイタリアひとり旅について語る – 序章
【イタリア旅行記②】ベッド購入。ベネチア人の家に転がり込んで始まった予期せぬ共同生活
【イタリア旅行記③】モネを魅了したベネチアの世界で油絵を描く朝
今回は、ベネチアで訪れた素敵なアトリエ(アートスタジオ)とそこで出会ったイタリア人アーティストたちのお話。
なぜだか私は昔から職人を見ると興奮する。職人の種類は問わない。黙々と一つのことに打ち込む彼らの姿は時間を忘れて何時間も見ていられるほどである。また作品に対するこだわりを聞くのも大好きで、職人の人たちの熱量ある話にいつも刺激をもらう。私は作り方などついつい根掘り葉掘り聴いてしまって長いと1時間以上は工房に滞在してしまうこともしばしばあるくらいだ。
ロンドンにいると工房に直接訪れて職人に会うという機会があまりない。たまに開催されるオープンスタジオのときに見るくらいである。ただロンドンにあるスペースは少し整いすぎていて、私が工房に抱いているイメージとちょっと違うからなぜかテンションがそこまで上がらないという不思議な状況に陥る。
イタリアに行く限りにはイタリアらしい工芸品を作る職人に会いたい、そんな思いを持って旅に出たから、ベネチアに着いて早々からアトリエや工房に対して常にアンテナを張っていたし、色んな人に聞いて歩いて回っていた。
そうしてジュデッカ島での滞在の最終日、島を歩いているとベネチア名物のゴンドラを作っている工房や、小さな陶芸専門店など、色々な工房を見つけた。
その中にはベネチア出身の素敵な画家が営んでいる個人ギャラリーも見つけた。
更に歩いて進んでいくと、クロイスターのある古い立派なイタリア建物を見つけた。看板にはItaca Art Studio di Monica Martin(アートスタジオ)と書いてある。教会兼修道院として15世紀に建てられ、その後兵舎として活用され、1990年代後半に、ベネチアの自治体が建物を購入。現在、12のワークショップ(スペース)を収容しており、自治体によって選ばれたアーティストや職人だけがそこのスペースを使えるようになっているそうだ。そして、2階は居住スペースになっており、アーティストたちがそこに住んでいるという(全員かは分からないが)。一気にわたしのテンションは上がった。こんな素敵な歴史ある建造物にアトリエを持てたら夢のようだなと思い馳せながら中に入っていった。
クロイスターのそれぞれ分かれた個別スペースでアーティストが作品制作をしていた。私が行った時間が少し遅かったからか、半分以上のスペースはもうすでに閉まってしまっていた。
まだ空いていたスペースのなかで会ったアーティストの一人が、ランプシェードから文房具まで、コットンの紙を使って色んな作品を作っている60代くらいの男性のアーティストだった。
英語がほとんど通じなかったこのおじさんだが、とても温かく迎えてくれた。何を作っているかの、どうやって作っているのか、いつものようにグーグル翻訳を使って色々聞いていった。とてもチャーミングな優しいおじさんだった。
そしてそのおじさんに、ベネチアでもっと他のアトリエも見てみたいんだと言うと、おもむろに携帯を取り出して、誰かに電話をし始めた。イタリア語での会話が続くが、何もわからなかった。
そして、電話を切ったそのおじさんは、私にイタリア語で「僕の友達がスタジオにいる。そしてこれが彼の電話番号だから訪れてみて」(っぽい感じのこと)と言って、その知り合いのアーティストの連絡先とその住所を教えてくれた。
予期せぬ嬉しい情報に、「どうもありがとう!彼のところに今度行ってみるね」と満面の笑みで言った。
そんなこんなをしているうちに、そろそろそのおじさんもスタジオを閉めるようだったので、私もスタジオを出ようとした。
すると彼は、これをあなたにあげるよ、といって、壁に飾ってあった一つのペンダントをとって私の服につけてくれた。
それはおしりを形どった、チャーミングなおじさんらしい茶目っ気あるペンダントだった。
そして外に出たら、すっかり日が暮れ始め、夕焼けの光がグランドカナルを照らし、息を呑むほどに美しい景色が広がっていた。
そして、後日。彼が教えてくれた彼の友達のスタジオへ向かった。道が入り組んでいてGoogle Mapがうまく機能しないベネチア。そのスタジオがどうしても見つからない。その人の電話番号に電話を掛けると、イタリア語で電話を取ってくれた。おそらくこの前のおじさんが私のことを少し話してくれていたから、きっと今話している人物が私ということを感じ取ってくれたのであろう。ちょっと表に出るから待っていて、といって、スタジオから顔を出してくれて、彼のスタジオにたどり着いた。
ここも古い建物に本や絵画が壁一面に敷き詰められたとても味のある場所で、私はすぐに魅了された。
今回のおじさんは、版画職人だった。ルーベンスの作品を模倣した作品集を出していたり、それ以外もとても巧みな技術が光る作品を色々見せてくれて、英語をしゃべらない彼とも翻訳機を使いながら、作品の作り方などを聞いたりした。
「ちょっと飲むかい?」そう言って、彼は奥からプロセッコとグラス、いちじくを出してきた。
その雰囲気のありアートに囲まれた空間のなかで、さっき出会った言葉の通じないアーティストの人とワインを手にアートの話を聞く、なんとも言えない至福の時間だった。
この2つのアトリエだけでなく、ベネチアで見つけた他のアトリエも、道行く人々が気軽に中に入って地元のアーティストたちと交流できる他にはない空間だった。
ロンドンなどの都市部では、こういった空間はいままで見つけたことがないに等しい。
私も絵を描いたりする中で、それぞれの作品に一つ一つに対する思いがこもっているから、それを直接人に話したりできる知ってもらえる空間があればいいと思っていた。だから、ベネチアでこんな素敵な空間があるということを知れたことが嬉しかったし、そんな場所に将来自分もいられたらと思った。
日本にもこういうところはあるのだろうか?ぜひあったら教えて欲しい。
最後に。もし時間があったら、My Artからベネチアでの絵などぜひ見てみてください。ベネチアの絵のリクエストがあればいつでも描きますよ。
それではまた次のイタリア旅行記で。