こんにちは。SATOMIです。
今回はロンドンのハイドパーク内にある美術館、サーペンタイン・ギャラリー(Serpentine Gallery)に行ってきました。
ロックダウンが多少緩和したイングランドですが、美術館は来館者の人数制限をしていて、基本的に事前にチケット予約しないと入れることが出来ません。今まではふらっと立ち寄れた美術館ですが、何週間も待たないと観れなくなってしまって、正直ちょっと残念です、、。(でも開館しているだけでもとても嬉しいです)
サーペンタイン・ギャラリーは広大なパイドパークの緑あふれる中にある比較的小さめのギャラリーで、実は2館あり、今回行ったのは「サーペンタイン・ギャラリー」の方で、もう一つは湖を挟んだ向こう側にある「サーペンタイン・ノース・ギャラリー」です。どちらも常設展はなく、いつも企画展を行っています。自然のなかでアートを楽しめるその空間が私はとても大好きで、今回のように来館制限がなければ、いつも散歩がてらにいつも立ち寄っています。
そして今回行っていた展示は、アメリカ、NYを拠点に活動している黒人女性アーティスト、ジェニファー・パッカーの「The Eye Is Not Satisfied With Seeing(目は観ることに飽きることはない:旧約聖書の一節)」でした。ヨーロッパにおいては初となる彼女の個展です。
もともと私の油絵の先生だった人がおすすめしていてずっと気になっていた展覧会で、今回は待ちに待った美術館訪問。
ジェニファー・パッカーが作り出す力強いカラーがとても素敵で、とくに彼女の人物画が大好きでした。色の載せ方やコンポジションなどがとてもユニークで、自分の絵画の参考にもなり、行ってよかったと思います。
展示会は2021年8月22日まで行われています。
今回はそんな展示内容を、日本にいらっしゃる方にもぜひお伝えできればと思いレポートにすることにしました。
また、これまでのリナッテ・ヤドム・ボアッチェの展示会レポートやイタリアンテキスタイルMITAの展示会レポートと同様に、一部、英語と日本語で解説していきます。
私自身、美術館にある英語の説明文などが読めるようになってから、西洋美術の世界がガラリと変わってもっともっと楽しめるようになったので、みなさんにも同じ感覚を味わってもらえたらと思って2言語解説をはじめました。美術の勉強をしている方や、海外の美術館に訪れるときに英語で理解できるようになりたいと思っている方にとってすこしでもためになっていたら嬉しく思います。
ジェニファー・パッカー(Jennifer Packer):The Eye Is Not Satisfied With Seeing
「私が絵を描くこと、特に日々の生活を描くことに傾倒しているのは、完全に政治的なものです。私たちはここに属しています。リアルタイムで見られ、認められるに値する。私たちは誰かに耳を傾けら、恥知らずな寛大さと正確さでイメージされるべきなのです」 ジェニファー・パッカー
“My inclination to paint, especially from life, is a completely political one. We belong here. We deserve to be seen and acknowledged in real time. We deserve to be heard and to be imaged with shameless generosity and accuracy.”
Jennifer Packer
展示会の様子
サーペンタイン・ギャラリーが公式Youtubeで放映している今回のエキシビッションの模様です。作品や様子がわかるのでぜひチェックしてみてください。
展示作品と解説
まずは展示会の中でとくに私が好きだったいくつかの絵画をいくつか厳選してご紹介します。
彼女がよく知っている人物を被写体にしているだけあり、モデルが彼女に心を許している表情がとても素敵ですよね。
花の絵画は2012年頃から、もともと肖像画を描いている合間に描き始めたのがきっかけだったそうですが、今はそれがシリーズ化しています。
花を題材にした絵については次のように書かれています。
パッカーは、特定の花の構成について葬式用の花束や、アメリカ黒人に対する国家や組織の暴力の悲劇に対して作られた個人的な哀しみの器であると述べている。
パッカー「これらの花束は、私の作品全体を通して言えることですが、観察することへの深い認識と、私たちが存在する、あるいは私たちが気にかける人々の周りにある空間やもの(知っているかどうかにかかわらず)の感情的な共鳴の理解を強調しています」。
Packer describes particular flower compositions as funerary bouquets and vessels of personal grief made in response to tragedies of state and institutional violence against Black Americans.
Packer notes: “These bouquets highlight something that’s been true in my practice overall, which is this appreciation for observation and also understanding the emotional resonance of the things, the spaces in which we exist and around the people that we care about, whether we know them or not.”
Serpentine Gallery
パッカーは、地面と空間の間を絶え間なく行き来しながら、ディテール(細部)を重ねたり、見せたり、隠したりすることで、座る人と見る人の間に保護的な距離を置き、具象を抽象のように変えていきます。色彩への鮮やかなアプローチと力強いスケール感が特徴的な彼女の作品は、長期にわたって制作されることが多く、形式的な厳密さと絵画的技術が感情的な親密さと融合されています。
本展のタイトル「The Eye Is Not Satisfied With Seeing(目は観ることに飽きることはない)」は、伝道者の書1章8節(旧約聖書)を引用したもので、感覚的な経験を通して知識を得ようとする飽くなき欲求と、証人となることの実存的かつ実用的な意義を指摘しています。
Packer offers a protective distance between sitter and viewer by layering, revealing and obscuring details through constant shifts between grounds and space, dissolving figuration into near abstraction. Characterised by a vibrant approach to colour and a powerful play of scale, her paintings, often worked on over extended periods of time, combine formal rigour and painterly skill with emotional intimacy.
The exhibition’s title The Eye Is Not Satisfied With Seeing (a reference to Ecclesiastes 1:8) points to the insatiable desire for knowledge through sensory experience, and the existential and practical significance of bearing witness.
Serpentine Gallery
ジェニファーパッカー・アーティストトーク
こちらもサーペンタイン・ギャラリーが撮影した、ジェニファーパッカー自身が今回の企画展について語っている動画です。ぜひチェックしてみてください。
いかがでしたでしょうか?
彼女の作品に込められた彼女の思いなどが理解できると、より一層絵画に対して興味が湧くものではないかと思います。
彼女の力強い色使いを意識しながら私も次の作品に励みます。
それでは。
企画展訪問日:2021年6月12日