私がイギリスに移り住んだのは26歳のとき。
仕事のあてもなく、友達もいなくて、英語もまともに喋れなくて、すべてを一からスタートしたあの日から5年が経過した今、イギリスの生活にも色んな意味で馴染み、地に足がついてきた感覚がようやく生まれてきて、こういったウェブサイトでの発信などができる余裕も生まれるまでになりました。
そんなこれまでの5年間、わたしは本当のイギリスの姿を見たくて、できる限り動いて回って、走り続けてきた気がします。今回は、私が見たイギリスの暮らしの魅力を少し皆さんにお話したいなと思ってこの記事を書くことにしました。
イギリスの生活といっても私はロンドンをベースにしているので、ロンドンの生活にフォーカスしてお話していきますね。
1. 多様性を受け入れるカルチャーと予期せぬ「出会い」
ロンドンに住む人の半分以上が外国人だと言われるだけあって、街を歩けば違う肌色を持ち、違う言語を喋る、様々な国籍の人たちに囲まれます。それぞれ違うバックグラウンドを持った人々が、何かの希望を持ってこの街に集まり、違う考えを持ちながらも互いを尊重して生きています。
他のヨーロッパの国々にも旅に出たりしますが、ここまでダイバーシティな街はあまりなく、それがロンドンをユニークにさせている理由です。
そういった環境の中で暮らしていると、仕事でもプライベートの生活でも、出会う人が本当に多種多様で、好奇心が人一倍旺盛な私にとっては、同じ場所にいながらもまるで海外に旅行に行ったかのように他の国の事情を聞けることが本当に面白く、私を飽きさせることはありません。
私の友達の国籍は、イギリス人にはじまり、スペイン人やイラン人、ロシア人まで本当に様々。例えばイラン人の友達には、彼らの家で温かいイランスタイルのもてなしをしてもらって、イランの文化や政治の話に盛り上がる。イタリア人の友達といれば、本場のパスタの作り方を教えてもらって料理をしながら楽しい会話をすることができる。
友達と会話するだけでも、日本人の「当たり前」を持っていない彼らから出てくる言葉はいつも予想外(新鮮)で、刺激や新しいアイディアを得ることがたくさんあります。私が人生を違う角度から見られるようになって、柔軟に物事を考えられるようになったのは彼らのおかげです。
毎日をもっと刺激的に生きることが私の人生においてテーマであるなかで、いろんな国籍の人と関われるこの環境がエキサイティングでもあり居心地のいい空間で、いつも新しい人や情報との「出会い」を届けてくれます。
例えばですけど、日本にいるとみんなが四季にあわせて似たような洋服を着るじゃないですか。それが良いとか悪いとかではなくて、ロンドンでは、色んな国から来ているから寒さの感じ方も様々で、真冬にTシャツ短パンで現れて扇風機を回しているポーランド人をみると、いつも笑ってしまったりします。こんなちょっとしたことでも、毎日のどこかでサプライズを見つけることができるのが私には幸せなんです。(例えが下手・・。)
日本人として海外で生きると決めたときに、どんな自分であっても受け入れてくれる、いい意味で他の人が何をしていても気にしない、そんな寛容な環境があるのは、私にとってとても居心地がいい空間で、ロンドンはそれを叶えてくれます。
2. アートとの距離感
現在のアート市場においてロンドンはNYに次ぎ世界第二位。最新のアートがこのロンドンの街に集まり取引されています。世界二大オークション会社であるサザビーズやクリスティーズが生まれたのもイギリスであり、世界有数の美術大学もロンドンにあるため、アートに敏感な人達が集まる街として機能するロンドンには、アートに関する面白いエキシビションやイベントが毎日必ずどこかで行われています。
何を隠そう、ロンドンにあるほとんどの有名な美術館や博物館は入場料が無料で、日本であれば、長い年月を掛けて企画されるような展示が、どんなときでも気軽に観ることができるのはロンドンに住む醍醐味の一つ。
私がロンドンのトラファルガー広場近くに住んでいた時は、ナショナルギャラリー、ナショナル・ポートレート・ギャラリーが歩いて5分のところにあって、ちょっと落ち込むことがあった時は、ナショナルギャラリーのモネの絵の前に腰を掛けて、物思いにふけながら元気をもらったりもしていました。
そしてそんな環境はもちろん私の絵画のスキルにも影響を与えてくれました。たとえばゴッホのような絵を描きたい気分だなって思えば、ナショナルギャラリーに行って「ひまわり」の絵を20センチくらいの至近距離で観察して、技術を思う存分盗める。日本の美術館では作品の前に柵があったりして、なかなか間近でみれないことが多いかもしれないですが、イギリスの美術館のほとんどは、間近に立つのも写真を撮るのもOKなので、西洋美術の歴史を変えてきた「本物」の作品から直接学ぶことができる、アート好きにとってはこれ以上にない環境なんです。(しかも美術館内で絵を見ながらデッサンすることもOKです)
イギリスに来たはじめの頃に西洋美術史のコースを取っていたんですが、美術館入場無料を最大限に生かして、カリキュラムのほとんどが美術館内で行われ、実際の作品を見ながら解説を聞いたりしていました。本を見ながら勉強するよりも何十倍も面白く、ためになったと思います。
個人経営のギャラリーももちろんロンドンの至る所にあって、現代アートから古典的なアートまで、エリアによって異なるタイプの作品を気軽に楽しむことができるのも私がロンドンの暮らしで大好きなことの一つです。
そして、街のいろんなところでライフドローウィングのセッションや(裸体のモデルを描くセッション)、美術館ではスカルプチャーのドローイングセッションを行っていたりして、新しいこと好きな私でも飽きることはありません。
もともと私が日本にいたときにここまでアートに対して関心があったわけではなく、イギリスが私をアート好きにさせてくれました。
アートが好きな人達と、アートに溢れた環境にいられることが私にとってはとても幸せなことに感じます。
3. 都心にいながら緑を感じられる居心地の良さ
ロンドンには巨大な王立公園が多数存在して、敷地内には美しい緑と手入れされた英国ガーデン、ときにはボートを楽しめる湖や乗馬コース、アートギャラリーや動物園まであったりします。
これまでにロンドンで何度も引っ越しをしてきたのですが、家選びするときに「公園が徒歩圏内にある」ということを条件に入れるほど、私のロンドンの生活に公園はなくてはならない存在で、あの開放的な空間で新鮮な空気を思い切り吸い込んでリラックスできる時間が、忙しいロンドンの毎日にいつも癒やを与えてくれます。
公園のベンチに座って仕事をするのがすごく好きで、オープンな空間が私の頭をリフレッシュしてくれて、ときにはいいアイディアを思いつかせてくれたりします。今住んでいる家の目の前にはスクエアという緑のある広場もあって、家のなかでの仕事がちょっと行き詰まったと思ったら、ラップトップだけ持っていってリラックスしながら仕事をしています。(トップの写真がそのスクエアです)
もちろん、仕事だけではなく、友達と公園をのんびり歩いたり、芝に座ってピクニックするのも私にとってロンドンに暮らすなかで大好きな時間の一つです。
4. 言語そしてイギリス英語
海外での生活を選ぶとき、第一言語が英語というのは私の中で大きな長所でした(言語があまり得意ではなかった分、特に)。
英語ができなかったとしても、日本人の私たちなら、学校で受けてきた基礎の英語教育で、ある程度の予想はできる。スーパーにいったとしても手に取った商品が何であるのあかでいちいち調べることは少なく済む。本屋に行けば英語の本が並んでいる。何かのスクールやレッスンに行けば英語で習える。
当たり前のように聞こえるかもしれないですけど、予期せぬことが多発する海外暮らしでは、言語の違いによって生まれる日常のストレスが少しでも軽減されるのは私には大切なことで、それは英語が第一言語でない場合はやはり難しいなと感じることがあります。賃貸契約とか、銀行の手続き、病院の診察など、やはり込み入った会話をする場合英語でできるっていうのは安心します。(ちなみにイギリスの医療は無料で、日本の通訳も必要であれば無料でつけることができます)
いつも他の国にしばらく滞在していると、現地のコミュニティに入っていけず疎外感を感じて、英語が恋しくなる。(それは例えばデンマークやオランダのような英語をネイティブ並みに話せる国だったとしても、やっぱり第一言語が英語でない以上、彼らの国で英語でずっと話すことに私は抵抗を感じます)
もちろん他の国に移り住むのであればその地の言語を勉強することになりますが、どんなに勉強しようが言語を完全にまで理解できないことの葛藤は(英語でさえ)常につきまといます。だから、ある程度喋れるようになった英語が通じるのは私にとっては大きな安心材料です。(これはあくまで、言語を覚えるのが苦手な私の意見で、得意な人はすぐに現地の言葉を覚えて慣れ親しめると思います。)
そして、なによりもわたしはイギリス英語がフェチなくらいすごく好きなんです。イギリス英語といってもたくさんのアクセントがありますが、BBC英語やクイーンズイングリッシュと言われる英語が大好きで、あのクラシックで洗練された発音で話しているのを聞くだけで、どきっとするセクシーさを感じます。
他の国に住む場合、その国で話されている言語が好きじゃないと、なかなか現地の人と本当の意味で近づくことは難しい。言語はそれぞれの国の文化を象徴する根源であるからこそ、その文化を尊重するためにも私はきちんと習得したいと思う。私はイギリス英語が好きだから、イギリスに住むことが好きなのかもしれません。
5. ヨーロッパの国々へのアクセス
イギリスに住むことの長所で欠かすことができないのは、他のヨーロッパの国々へのアクセスが容易だということ。パリにはロンドンから電車で2時間ちょっとあれば行けるので日帰りで行くこともできる。西ヨーロッパであれば大抵どこの国でも飛行機で2、3時間で行けますし、しかもチケットが1万円もかからないことが普通にあります。時差もないから、次の日の仕事にも支障をきたすこともありません。
ヨーロッパの歴史的な文化も、新しい地で新しい経験をするのも大好きな私にとって、他国へのアクセスがいいロンドンでの暮らしはすごく恵まれた環境にあると思います。
最後に・・・イギリス生活の短所もちょっとだけ
もちろんイギリスの生活が常にパーフェクトというわけではなく、ダウンサイドがあるのも事実です。
イギリス生活での短所も簡単に触れると・・
・天気
イギリスの天気がよくないことは有名な話しですが、特に秋から冬にかけては曇りの日が多い。ただ雨の日は、雨が降ったとしても強く降ることはなく基本はぱらぱら程度です。ただ、色鮮やかな絵を描くことが好きな私にとっては明るい陽射しはとても重要な要素であり、単純に太陽の光が恋しくなるのでそういう時は天気のいい国に旅行に行って陽射しを思う存分楽しむようにしています。
・食事
イギリス(ロンドン)のレストランの質はどんどん上がってきていると言われていて、そこは私も同感しますが、日本のように安くても満足いく美味しさを提供している場所を見つけるのはなかなか難しいです。あと、イギリスの天気や地勢が原因かとも思いますが、食材自体の味が他の国のものほど濃厚ではない気がします。やっぱりシチリアのトマトやオレンジが恋しくなるし、スペインのシーフードが食べたくなります。イギリス人が他国の人ほどそこまで食事に関心がないっていうのも影響しているのかもしれませんね(イギリス人はパブに行って、立ちながら食事なしでドリンクを楽しむケースが多い。でも最近「フーディー」がブーム?になっているって聞きました。)
他にも細かい点などいろいろありますが、こういった短所もひっくるめて、最初に話した長所がその短所を補ってくれるくらい素敵だから、この魅力的なロンドンの街に私は住み続けているんだと思います。
もしかしたら将来的にロンドンから拠点を変えることもあるかもしれませんが・・・
でも、世界のどこにいても、いつもロンドンシックになってしまうくらい、ロンドンは変わらず私にとって大好きな街です。
About Meのページに、イギリスに移り住んだ理由なども詳しく書いているので、時間があったときにぜひ読んでみてください。