こんにちは。SATOMIです。
アートコレクターの方なら必ず知っている、世界最大手のオークションハウス、クリスティーズとサザビーズ。
この2つの違い、皆さんご存知ですか?
どちらも1700年代のイギリスで創設されたオークションハウスで、ロンドンではそれぞれセントジェームス、メイフェアのエリアに位置しており、お互い徒歩圏内です。
私がロンドンにいてたまらなく好きなことがあるんですが、それがこの2つのオークションハウスのプレビューイングを鑑賞すること。
オークションでビッドする人たちが作品を見定めにくるプレビューイング(事前の展示会)は一週間程度開催され、一般公開されています。
オークション会場で直接作品を見ることのなにが楽しいかというと、通常は美術館に行かなければ観れないようなアーティストの作品を無料で鑑賞出来るのはもちろんですが、推定価格が横に載っていること。美術館ではただ鑑賞するだけで、どれくらいの価格でその作品が取引されているかなんてあまり知る機会がないからこそ、オークション会場で実際のアート作品を鑑賞しながら、相場を知るのはとても興味深くて面白いです。また、エキシビションはオークションの度に入れ替わるので、何度行っても違う作品を豊富なジャンルで楽しむことが出来るのもオークション会場で作品を鑑賞する醍醐味です。
↓はロンドンで行われた印象派・モダンアートのイブニングセールに出品された、ピカソの作品。推定価格はなんと$5,200,000 – 7,800,000、日本円でおおよそ5億7500万~8億2700万円です。
(それをどんなに至近距離で鑑賞したり写真を撮っても何も言われないのは、私にとっては天国のようなんです)
高額な作品が取引されるイブニングオークションは関係者以外入ることは出来ませんが、日中のオークションであれば一般公開しているので、私もタイミングが合えば見に行くこともあります。あの緊迫とした空気の中でGavelと呼ばれるハンマーが鳴り響く感じがとてもクールで何回見ても興奮してしまいます。
こうして世界の本物のアート作品を身近に見られるということは、私がロンドンに住んでいる理由の一つに挙げるほど大好きなことで、その世界をみなさんにも少しご紹介出来たらと思い、今回はそんなクリスティーズとサザビーズの違いについて特集することにしました。
そして私も時が来たら、まずは手頃な絵画や陶器などからオークションで購入してみたいと思うので、もしすでにクリスティーズやサザビーズで作品を落札されたことがある方は経験談などぜひシェアして下さいね。
クリスティーズとサザビーズの違い
クリスティーズ(Christie’s)
1. クリスティーズの概要
ロンドン、ニューヨーク、香港、パリ、ジュネーブに販売拠点を持ち年間約350回のオークションを開催。本部はロンドンで、日本を含め、世界46か国にオフィスを構えます。絵画などの美術品をはじめ、宝石、時計、家具、ワイン、ファッションアイテムなど80種類以上の分野を取り扱っています。クリスティーズはフランスの大富豪、フランソワ・アンリ・ピノーの持ち株会社であるグループ・アルテミスが所有しています。
近年にはアート作品の世界記録価格(レオナルド・ダ・ヴィンチの『サルバドール・ムンディ』、2017年)、単一のコレクション販売の世界記録価格(ペギー・アンド・デイヴィッド・ロックフェラーコレクション、2018年)、現役アーティスト作品の世界記録価格(ジェフ・クーンズの『ラビット』、2019年)を達成。
“クリスティーズにおける最近のイノベーションには、史上初のNFTに基づいたアート作品の出品(2021年3月、Beeple’s Everydays)があり、支払い手段として仮想通貨を取り入れています。また、デジタル・イノベーションの業界リーダーとして、拡張現実(AR)、グローバル・ライブストリーミング、バイナウ・チャンネル、ハイブリッド・セールス・フォーマットを統合した鑑賞・入札体験の創造など、アート・ビジネスを再定義する新しいテクノロジーを開拓し続けています。“(公式ホームページ参考)
また、クリスティーズの公式YouTubeチャンネルがあるのですが、そのコンテンツがとても充実していて、個人的にはArtist Studio Visitやその他著名作家の作品の裏側など話している動画が好きで見たりしています。是非チェックしてみてください。(すべて英語です)
2. クリスティーズの歴史
ジェームズ・クリスティーが1766年にロンドンのポール・モールにあるセールルームで販売を行ったのがクリスティーズ最初の取引でした。1788年にはロバート・ウォルポール卿の美術品コレクションをロシアのキャサリン大帝に売却する交渉を行うまでに拡大します。
1786年、『英語辞典』(1755年)の作者として有名なサミュエル・ジョンソンが亡くなった後、彼が所蔵していた書物を販売。この医学、法律、数学、神学など、さまざまなテーマの書籍が取引されました。
1824年に設立したロンドンのナショナル・ギャラリーは、この時クリスティーズから多くの作品を購入してオープンします。また、ニューヨークのメトロポリタン美術館も、1958年にクリスティーズから最初の展示物を購入し、ロンドンのアート市場との最初の接点を築きました。
現在もなお、ヨーロッパ、アジア、アフリカ、アメリカに拠点を持ち、世界的な影響力を誇っています。
3. クリスティーズでの入札方法
クリスティーズの公式ホームページで、アカウントの登録方法などが動画付きで説明されています。個人も簡単に登録して入札できるので、まずは気になる作品をAuctionページで探してみましょう。カタログをこちらのページから購入することも可能です。
ちなみに、オークションには、ライブオークションとオンラインオークションがあり、ライブオークションは実際に会場で行われるものを指し、オンラインは会場で行われず、オンラインのみで完結するもののことをいいます。世界のどこからでも、電話、事前、オンラインのライブ動画「Christie’sLIVE™」を見ながらなどの方法で入札することが可能です。
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Christie’sLIVE™に参加する場合、まずはwww.christies.comで必要なオンラインフォームに記入し、必要な情報を提供する必要があります。
(英語が難しい方は、こちらのクリスティーズジャパンの日本語のPDFが参考になります。- 2020年5月最新)
日本にはクリスティーズのオフィスがあるので、何かわからないことがあればそちらに問い合わせするのがいいかもしれません。日本語のウェブサイトはこちら。
また、公式アプリで最新情報やオンライン入札などが出来るので、クリスティーズのアプリも確認してみてください。
4. クリスティーズの買手手数料(Buyer’s Premium)
入札が成約した場合、下記の買手手数料がかかります。下記はこの記事を執筆した際の状況ですので、都度、最新版の手数料をこちらからチェックすることをおすすめします。
※税金などは別途かかるので、入札する際に表示されるカリキュレーターで見積もりをチェックしてみてください。
サザビーズ(Sotheby’s)
1. サザビーズの概要
ロンドン、ニューヨーク、香港を中心に展開するサザビーズは、世界48ヶ所でオークションを催している最も歴史のあるオークションハウス。現在の本部はニューヨークで、世界40か国に80拠点を有し、クリスティーズと同様、印象派、コンテンポラリーアートから、日本美術、ジュエリーまで幅広い作品を取り扱います。
サザビーズも同様にNFTに注力していて、2021年4月に行われたサザビーズの最初のNFTセールでは3日間で1700万ドルを達成しました(関連記事)。
サザビーズのYouTubeチャンネルはアーティストに関するドキュメンタリーからオークションの様子まで面白いものばかりなので、ぜひ一度ご覧になってみてください。特にアートコレクターの部屋の紹介を見る内容が私は大好きです。(全て英語です)
サザビーズが取材した、ポール・スミスのアートコレクションを紹介している動画について下記の記事にまとめているので、是非チェックしてみてください。
2. サザビーズの歴史
サザビーズは1744年に起業家、出版者、書籍販売者であったサミュエル・ベイカー(Samuel Baker)によってロンドンで設立。
ベイカー、その後継者である甥のジョン・サザビーは、いずれも主要図書館とのコネクションを持ち、希少価値の高い古本を販売していきます。ナポレオンが死去したときには、彼がセントヘレナに亡命したときに持っていった本を売りに出しました。
1950年代半ばになると時代の変化に対応するため、印象派やモダンアートの部門を設けます。エリザベス2世をはじめとするビューアーを獲得していき、1957年に女王とオランダの銀行家ウィルヘルム・ワインバーグが所有する印象派、ポスト印象派の作品を集めたワインバーグ・コレクションを訪れました。
そして1964年には当時アメリカ最大の美術品オークションハウスであったパーク・バネット社を買収し、事業拡大を図ります。2019年6月にフランス系イスラエル人の通信事業者であるパトリック・ドラヒ氏が、37億ドルでサザビーズを買収したことにより、高額な保証などを株主に正当化する必要などがなくなったため、より柔軟な取引が可能となりました。
3. サザビーズでの入札方法
クリスティーズと同様に、オンラインでアカウント登録することが可能です。入札方法についても同様で、現地オークション会場、入札不在・事前、電話、オンライン入札があります。(アプリで最新情報やオンライン入札などが出来るので、サザビーズの公式アプリも確認してみてください。)
サザビーズは日本語訳付きのアカウント登録方法を説明した動画があるので下のリンクから飛んでみましょう。
日本語のPDF資料はこちらから確認できます。
サザビーズのオークション予定カレンダーで、入札したい作品があるかどうか見てみましょう。
4. サザビーズの買手手数料(Buyer’s Premium)
こちらが2021年2月1日に更新された最新版の買手手数料表です。改定されている場合があるので、「Sotheby’s Buyer’s Premium」で検索してみることをおすすめします。
これを見ると、クリスティーズよりもサザビーズの手数料の方が低いことがわかります。
※上記の手数料とは別で税金などがかかりますので、入札時に確認してください。
クリスティーズとサザビーズの売上について
2020年、サザビーズは売上高50億ドルを達成し、クリスティーズの44億ドルを上回りました。(現在非上場企業であるため利益は不明。)
サザビーズの総売上高は2019年の48億ドルから増加したのに対し、一方、クリスティーズの2020年の売上高は、ライブオークションの売上が減少したために2019年より25%低くなっています。
サザビーズが好調だったわけは、主にデジタル販売フォーマットへの移行によるものが大きいとされており、2020年に行われた400を超えるオンラインオークション(昨年から30%の増加)は合計5億7000万ドルを超え、2019年の約7倍でした。
サザビーズのEMEAマネージングディレクターであるSebastianFahey氏は、2020年の1月と2月にアジアの動向を綿密に追跡し、コロナでロックダウン中もオンラインでの販売に注力したおかげだとして話しています。
クリスティーズも、デジタルでの販売で大きな成長を見せており、2020年のオンライン売り上げは前年対比262%の2億4,300万ポンドで記録的な数字を達成しました。しかし、クリスティーズは、2018年の4億5000万ドルの「サルヴァトール・ムンディ」や2019年9100万ドルで落札されたジェフクーンズの「ウサギ(1986年)」など、高値が付いた作品があった数年前と比較し、2020年最高額であったロイ・リキテンスタインの「Nude with Joyous Painting(1994年)」はサザビーズの最も高値がついた作品の約半分、4,624万ドルにとどまりました。
クリスティーズとサザビーズの今後の動向
- アジア市場の拡大…2020年、アジアからの入札が米国からの入札を初めて上回り、アジアのコレクターによる購入は、欧米のコレクターと比較してはるかに好調とみられ、今後もその傾向が顕著になると言われています。アジアのコレクターは著名なアーティストの作品のみでなく若手アーティストにも注目しており、ダナシュッツ、サルマン・トゥール、アモアコボアフォなど、多数のミレニアル世代のアーティストがオークションで記録を作っています。
- ブレグジットによるパリへの移行…イギリスがEUを離脱したなか、フランスでは芸術市場奨励のためにアート関連のVATを低く設定しているため、フランスからその他EU諸国に無関税でアート作品を輸出入する流れが主流になることが予想されています。それを背景にして、両オークションハウスともにパリでのビジネスに力をれ始めています。
いかがでしたでしょうか?すこしはサザビーズとクリスティーズについて勉強することが出来ましたか?
日本にいらっしゃる方はオンライン入札が便利かと思いますが、ロンドンにいらっしゃった場合はぜひロンドン本店に訪れて、生の雰囲気を味わってみてください。
こちらの記事以外にも、今後のアートの動向をまとめた記事(↓)もぜひ読んでみてくださいね。
それではまた。