レンブラント「The State Bed」
こんにちは。SATOMIです。
前回のシルクスクリーンプリントについての記事をご覧になった方、いかがでしたでしょうか?
シルクスクリーンは版画の一技法だということを紹介しましたが、エッチングも版画のやり方の一つ。シルクスクリーンは版画の中でも、板に穴を空けて、その穴にインクを通して紙に着色する孔版というやり方で、今回のエッチングは削った部分に入ったインクが絵になる凹版という種類の版画になります。
このエッチングと呼ばれる技法は写真技術が発達する前のヨーロッパで広く見られた絵画技術でした。
エッチングは油絵や木版画などでは出せない細やかなラインの描写と限られた色で表現された濃淡が素敵です。エッチングの作品を残したアーティストとしては、ドイツのルネッサンス期の画家アルブレヒト・デューラーや、17世紀オランダ絵画の巨匠レンブラント(トップの画像の作品もレンブラント)が有名です。
今回の記事では、エッチングのやり方から歴史までをカンタンに紹介します。
解説をする前に・・・
私のサイトでは、英語の原文に日本語訳を添える形で、内容を二言語で解説をしているんですね。それは、私自身がイギリスに来たばかりのときに、美術館にある説明も読めず、ギャラリーに行っても絵画についてギャラリーの人と話せないしで、とても悔しい思いをして、でも英語で理解できるようになったら、西洋美術の世界が見違えるほど広がった経験をしたから。なので、皆さんが海外でアートを見る時や、西洋美術を勉強するときのために、少しでも英語で理解できるようになって、もっと西洋美術の知らなかった世界を楽しめるようになっていただければとても嬉しく思います。
よく出てくるアートの単語には下線を引いているので、ぜひ覚えみてください。(私もまだまだ知らない単語がいっぱいなので一緒に勉強中です)
エッチングとは? – What is an etching?
エッチングとは、化学作用を利用して金属製の印刷版に切り込み線を入れ、そこにインクを定着させて画像を形成する版画技法です。
Etching is a printmaking technique that uses chemical action to produce incised lines in a metal printing plate which then hold the applied ink and form the image
TATE
エッチング(銅版画)のやり方 – How to make an etching
エッチングでは、印刷版をニスで覆い、ニードルでデザインを削ります。(=金属板に耐酸性の防食剤を掛け、それが乾いたら、ニードルで防食剤の膜を削っていく)
そこに酸をかけると、露出された金属部分(削った部分)に酸が入り込みますが、(防食剤で)覆われた部分には影響がないため、デザインが版に刻まれます。
ニスを拭き取り、紙に転写するためにインクを塗っていきます。
酸をかける時間が長ければ長いほど、刻み線は深くなり、色も濃くなります。
また、金属に直接ニードルで線を入れることもでき、この方法をドライポイントと呼びます。ニードルで突き上げられ金属部分がインクをキャッチして、特に重厚感のある効果が得られます。
In etching the printing plate is covered in varnish. The design is scratched through with a needle. Acid is applied, which bites into the exposed metal, but does not affect the covered areas, thus etching the design onto the plate.
The varnish is removed, and the plate inked for transfer to paper.
The longer the acid is applied, the deeper the lines are etched, and the darker they are.
Lines can be cut directly into the metal with a needle, a process known as drypoint. The metal thrown up by the needle catches the ink and creates a particularly rich effect.
National Gallery
イギリスのリバプールのナショナル・ギャラリーが撮影したエッチングのやり方について詳しく解説している下の動画も見てみるとわかりやすいと思います。
エッチングの歴史とは? – History of Etching
金細工師をはじめとする金属加工職人が、銃や鎧、杯や皿などの金属製品を装飾するために行われていたエッチングは、ヨーロッパでは少なくとも中世から知られており、古代に遡る可能性もあります。鎧の精巧な装飾は、ドイツにおいて、版画技法としてのエッチングの誕生よりも少し前の15世紀末頃にイタリアから入ってきたと考えられています。ドイツ語圏や中欧の版画家たちがこの技術を完成させ、アルプスを越えてヨーロッパ中にその技術を伝えていきました。
Etching by goldsmiths and other metal-workers in order to decorate metal items such as guns, armour, cups and plates has been known in Europe since the Middle Ages at least, and may go back to antiquity. The elaborate decoration of armour, in Germany at least, was an art probably imported from Italy around the end of the 15th century—little earlier than the birth of etching as a printmaking technique. Printmakers from the German-speaking lands and Central Europe perfected the art and transmitted their skills over the Alps and across Europe.
Wikipedia
版画への応用は、ドイツ・アウグスブルクのダニエル・ホップファー(1470年頃〜1536年)が考案したとされています。ホップファーは甲冑に装飾を施す職人で、鉄板を使用し版画に応用していきました。
アルブレヒト・デューラーが1515年に描いたものが最古の銅版画とされていますが、デューラーは6枚の銅版画を描いた後、銅版画を開拓せず彫刻に戻っています。
銅版への移行はイタリアで起こったとされており、その後、版画家にとって最も人気な媒体として彫刻に対抗していったのがエッチングでした。エッチングの大きな利点は、ビュランという道具を使った難しい技術が要求される彫刻とは異なり、版に絵を描く基礎的な技術であったため、デッサンを学んだアーティストであれば比較的簡単に習得できることでした。
The process as applied to printmaking is believed to have been invented by Daniel Hopfer (c. 1470–1536) of Augsburg, Germany. Hopfer was a craftsman who decorated armour in this way, and applied the method to printmaking, using iron plates.
The oldest dated etching is by Albrecht Dürer in 1515, although he returned to engraving after six etchings instead of developing the craft.
Wikipedia
The switch to copper plates was probably made in Italy, and thereafter etching soon came to challenge engraving as the most popular medium for artists in printmaking. Its great advantage was that, unlike engraving where the difficult technique for using the burin requires special skill in metalworking, the basic technique for creating the image on the plate in etching is relatively easy to learn for an artist trained in drawing.
エッチング版画(銅版画)作品の購入
現代アーティストによるエッチング版画の購入を検討されている方は、Saatchi Art やArtsperなどチェックしてみてください。カラフルなものやモダンなデザインのエッチングも素敵です。
いかがでしたでしょうか?
エッチングのことを勉強したら、わたしも挑戦してみたくなってきました。もしイギリスでドロップインでできるところなど知ってたらぜひ教えて下さいね。