色鮮やかなカラーパレットに遊び心あるテキスタイルが人気のファッションブランド、ポール・スミス(Paul Smith)。
日本でも人気の高いポール・スミスは、イギリス、ノッティンガム出身のファッションデザイナー、Sir Paul Smithが1970年に立ち上げたブランド。もともとは人が数人入ることも難しいようなロンドンの小さなテナントスペースで、服飾を学んだ奥さんとともに金曜・土曜のみの営業の洋服屋を開店したのが始まりで、そこから世界の名だたるファッションブランドへと成長させました。
そんな彼のユニークなファッションデザインの源泉になっているのが、アート。彼のコヴェントガーデンにあるスタジオは、ポール・スミスがこれまでに集めてきたアート作品で埋め尽くされていて、まるでアートギャラリーの裏スペースに迷い込んだよう。絵画からブリキのおもちゃまで、そのコレクションはバラエティ豊かです。
ちなみに上の写真は、ロンドンで毎年開催されるLondon Craft Week (ロンドン・クラフト・ウィーク)で、メイフェアにあるポール・スミスの店舗がその期間限定で展示していたアート・コレクションの一部(すべて購入可能でした)。実際にポール・スミス自身がキュレーションしたかどうかは定かではありませんが、ポール・スミスのファッションデザインらしく、どこかツイストを加えた面白いアート作品が並んでいて、訪れる買い物客を楽しませていました。
彼のアート収集のきっかけや理由について、まずはこのSotherby’sが撮影した彼のアート・コレクションの動画を見てみてください。(私はこの動画が好きでよく観ます)
スタジオに飾られた作品の多さには圧倒されますね。
ポールスミスが動画の中で彼が言っていることは、
僕は意識的にアートをコレクションしているわけではない。僕がアートを買うのは、ただその作品が好きだという理由だけだ。(省略)6歳児が作った作品から有名なアーティストの作品まで、僕がアートを集める理由はなんだってありさ。
ポール・スミスがアートに興味を持つようになった理由は、幼い時アマチュアの写真家であった父親にもらったカメラで色んな被写体を撮るようになり、周りにあるものを観察するようになったのが始まりだと言っています。そしてポール・スミスは、バイク事故で入院していた病院で出会った患者に連れて行ってもらった、美大の学生が通うパブで、今までに見たことのなかったカンディンスキーなど新鋭的なアートの存在を知り衝撃を受けました。また、ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(ロンドンの有名美術大学)でファッションを専攻していたアート好きな奥さんの影響も強かったと言います。
ロンドンのコンテンポラリーギャラリー、ホワイト・チャペルで開かれていた、のちにイギリスを代表するアーティストとなるデイヴィッド・ホックニーの最初の展覧会に赴き、プリティ・チューリップというプリント作品をガス代も払うことさえままならないくらい貧しい中で購入したのが、その後続く彼のアート・コレクションヒストリーへの出発点でした。
動画の中で彼が語っていた、日本の風呂敷からもインスピレーションを得ているというはなしも実に面白いですよね。日本人にとって慣れ親しんだ身近なものでも、海外の人から見るとそれがユニークで新鮮に映っていることを改めて実感させられます。
またポール・スミスは、アーティストについて知ることで、アーティストの世界の人たちと会話ができ、その交流の中で作品の意図や背景を知ることができる楽しさについても述べていました。
私自身、ロンドンのギャラリーを巡っていたり、ギャラリーのオープニングイベントなどに参加すると、出展しているアーティストに出会うこともあるのですが、こちら側が彼らの絵に興味を持ち、そして絵の知識がある程度あるなかで話しをすると、彼らも情熱的に作品にかける想いや、アート作品の描き方などを語ってくれます。興味のあるアーティストについて、またアート全体について知見を広げることは、アート収集をする中での一つの醍醐味かもしれません。
そして、ポール・スミスが動画の最後に残したアートコレクターにアドバイスは、
作品が有名だからとか、高額だからという理由ではなく、自分の直感に従って購入するアートを選ぶこと
とてもシンプルですが、これはどのアートコレクターもアートの選び方の質問で必ず口にしている答えです。
有名な作品を除いては、西洋アートの世界は日本においてさほど身近ではないかもしれません。
私が日本にいたときは、著名なアーティストの展示会があれば美術館に出向くぐらいしか興味のなかったアートの世界ですが、イギリスに移り住んでから本能的にアート鑑賞をする楽しさを知り、アート作品に対して見る目が変わっていきました。
これからもみなさんにとってもアートをより身近に感じられるような情報をシェアしていきますので、今後のアート・コレクションシリーズを、お楽しみに。
日本では販売していないようですが、最後にポール・スミス誕生50周年で作られたデザイン本をご紹介します。彼が選んだ50のオブジェを通して、彼のデザインのインスピレーションの源を垣間見ることが出来ます。Paul Smithのデザインが好きな方はイギリスのアマゾンから取り寄せてみるのもおすすめです。(下記のリンクはイギリスのアマゾンのアフィリエイトです)
Paul Smith
それではまた次の回に。