(↑サザビーズで250,000USDで落札されたアンディー・ウォーホルの「マリリンモンロー」Credit)
こんにちは。ロンドン在住のSATOMIです。
突然ですが、アンディー・ウォーホルの作品といえば、何を思い浮かべるでしょうか?
マリリンモンローの肖像画?それともあのアイコニックなキャンベル・スープの缶?
ポップアート界の巨匠と呼ばれる彼の有名な作品の多くは「シルクスクリーン」という技法で作られています。
シルクスクリーンとは、版画の一つの手法で、版画にはシルクスクリーン以外にも葛飾北斎などで有名な木版画やレンブラントが打ち込んだ銅版画など様々な種類があります。
ロンドンの高級ホテルやブランドショップが軒を並べるメイフェアに、Halcyon Galleryという著名なインターナショナルアーティストの作品を扱ったコンテンポラリーギャラリーがあるんですが、いつもアンディー・ウォーホル展をしているんじゃないかって思うくらい、よくアンディー・ウォーホルの作品を見るんですね。
話はそれるんですが、ロンドン暮らしで私が大好きなのは、こうやってアートが気軽に楽しめること。日本ではアンディー・ウォーホルの作品があそこまでたくさん並んでいたら、ちょっとした小さな美術館の企画展示になりそうなくらいんなですが、彼をはじめとする著名作品だけではなく、いまトレンドになっている作品も含めて、ふらっと通りがかりで見られるのが、いつもロンドンに住んでいて幸せだなって思わせてくれる素敵なところなんです。
アンディー・ウォーホルの絵はロンドンの美術館のテート・モダンにも飾られていて、結構彼のシルクスクリーンの作品を見る機会が多いのですが、ずっとどのように作られているのか興味があったので、今回はスクリーンプリントをテーマにお送りしていきたいと思います。
シルクスクリーンは比較的手頃な価格で手に入るため、有名なアーティストの作品だったとしても、油絵ほどは気張らずにも絵画収集することができます。
解説をする前に・・・
私のサイトでは、英語の原文に日本語訳を添える形で、内容を二言語で解説をしているんですね。それは、私自身がイギリスに来たばかりのときに、美術館にある説明も読めず、ギャラリーに行っても絵画についてギャラリーの人と話せないしで、とても悔しい思いをして、でも英語で理解できるようになったら、西洋美術の世界が見違えるほど広がった経験をしたから。なので、皆さんが海外でアートを見る時や、西洋美術を勉強するときのために、少しでも英語で理解できるようになって、もっと西洋美術の知らなかった世界を楽しめるようになっていただければとても嬉しく思います。
シルクスクリーンとは? What is silk screen?
シルクスクリーンとは孔版印刷の一種で、シルクや化学繊維などでできた布地をフレームに張ったスクリーンを使用します。
布地で刷らない部分(色を出さない部分)をステンシル(型紙)によって塞ぐのですが、この印刷の版を作る際は、接着剤やラッカーの上に塗る方法、粘着性のあるフィルムや紙を貼る方法、感光剤をスクリーンに塗って写真として現像する方法などがあります(写真製版法)。インクや絵の具をその版の上にのせ、スクイージーと呼ばれるゴム製のブレードを使って、(型に遮られていない部分の)布地の孔部分からインクを紙上に押し出します。
A variety of stencil printing, using a screen made from fabric (silk or synthetic) stretched tightly over a frame.
The non-printing areas on the fabric are blocked out by a stencil. This can be created by painting on glue or lacquer, by applying adhesive film or paper, or painting a light-sensitive resist onto the screen which is then developed as a photograph (photo-screenprint). Ink or paint is then forced through the (non-blocked areas of) open fabric with a rubber blade, known as a squeegee, onto the paper.
TATE
下の動画はTATEのHOW TOシリーズで、アンディーウォーホルのようなシルクスクリーン絵画を作り出す方法を解説しているものなので、シルクスクリーンのイメージがつかみやすいと思います。
シルクスクリーン絵画の歴史 – History of silkscreen painting
スクリーンプリント(シルクスクリーン)は、1920年代から商業的に使われはじめ、1930年代のアメリカのアーティストたちによって作品製作に利用されるようになり、商業目的のものと呼び分けるために、アーティストの美術作品を「セリグラフ」と呼ぶようになりました。1950年代以降になると、版画の技法としてアーティストの間で広く使われるようになります。
Screenprinting has been used commercially since the 1920s. It first began to be used by artists in 1930s America and the term ‘serigraph’ was initially used to denote an artist’s print, as opposed to commercial work. It has been widely used by artists as a printmaking technique since the 1950s.
TATE
シルクスクリーン絵画の価格の決まり方
油絵や水彩画と違って、型ができてしまえば複製出来てしまうシルクスクリーン絵画。
この絵の価値を決めているものとは一体何なのでしょうか?
・絵画の希少性
基本的にシルクスクリーン絵画の下の方に、作品の総数と何枚目に描かれたものかが記されています。もちろん、この枚数が多ければ多いほど一枚あたりの額は安くなりますし、少なければ高くなります。
・技術力
どんな作品も、手が込んだものや、時間がかかるものは高くなります。例えば何色も色を重ねていたり、細かなデザインであった場合や、またサイズが大きいものは制作が難しいため金額が高くなります。中には機械で作られているものもあり、手作業のものよりも値段は大分抑えられます。
・コンディション
シルクスクリーン作品の多くが紙であるため、油絵などに比べて劣化が早いのが特徴。色あせてきたり、黄ばんできたり、しみやシワが出きやすいため、コンディションよく残っている作品は高値になります。
コンディションは基本的に一昔前に制作された作品の場合の話で、最近描かれた作品を手に入れるのであれば、コンディションを然程気にする必要はないでしょう。
・サインの有無
プリントにアーティスト本人の直筆サインが入っているものはより高額で取引されます。大量に刷られている作品の場合は印刷やスタンプでサインを済ませられているケースが多いです。複製画に手書きサインをするのが一般的になったのが20世紀ごろになるため、その前の作品の多くはサインが入っていないことが多いです。
いかがでしたでしょうか?
今度は他の版画についても解説していければと思っています。それまでお楽しみに。