↑【Afternoon Tea Time With Colours】By SATOMI(Me)
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イギリスの生活に深く根付いている紅茶。
そんな誰からも親しまれている紅茶には実は面白い歴史が詰まっていたって知っていましたか?
イギリスを訪れる観光客にも人気なアフタヌーンティーも、歴史を知ってから体験するともっと味わい深さが増すもの。
今回はそんな知ったら話したくなるようなイギリスの紅茶の歴史、イギリスで飲まれているお茶の種類、そして最後に美味しい紅茶の飲み方についてお話していきます。
イギリスの紅茶の歴史をわかりやすく解説
1. 中国で始まったお茶文化と、日本への広まり
実は、世界におけるお茶の歴史は中国から始まります。一説には、紀元前2737年、中国の皇帝・神農(しんのう)が木の下に座っていた時、使用人が沸かしてた水の中に木の葉が舞い落ち、漢方医としても知られていた神農は、その偶然出来た煎じ薬を試したのがきっかけだとされています。その木はチャノキ(学名:カメリアシネンシス)で、今日でもお茶として飲まれ続けています。
中国では、西欧でお茶が飲まれるようになる何世紀も前から、茶を飲む生活が親しまれていました。漢の時代(紀元前206年~220年)にはお墓からお茶を入れる容器が発見されていますが、お茶が実際に中国の国民的な飲み物として定着したのは、唐の時代(618年~906年)と言われています。
8世紀後半には、陸羽(りくう)という作家が茶に関する中国最古の専門書「茶経」という書物を残し、当時の中国人の間でどれくらいお茶が好まれていたかを知ることが出来ます。また、中国に留学していた日本の僧侶たちによってお茶が日本にも持ち込まれ、その後の茶道の発展に見られるように、茶の飲用は日本文化の重要な一部となっていきました。
2. ヨーロッパでお茶が広まったのは実はポルトガル人によるものだった?
ヨーロッパにお茶が入りはじめたのは、もっとずっとあとの16世紀後半のこと。貿易や宣教師として東洋に滞在していたポルトガル人によって持ち込まれたのが最初とされていますが、最初は商業目的ではありませんでした。
16世紀末からポルトガルの東洋貿易ルートを侵略し始めたオランダ人たちが、ジャワ島に商館を設け、1606年にジャワ島経由で中国からオランダに初めて茶葉を輸送したのが、ヨーロッパにおいて紅茶が商業目的で持ち込まれたはじまりだとされています。お茶はオランダ人の間で流行し、そこから西ヨーロッパ大陸の他の国々にも広まっていっていきましたが、高額であったために、富裕層のみが楽しむことのできる飲み物でした。
3. ポルトガルから来た王女によって始まったイギリスの紅茶の歴史?
イギリスに紅茶が広まり始めたのは1600年以降のこと。イギリスの東インド会社がヨーロッパ以外からの輸入を独占していた時代に、東インド会社の船員がお土産として紅茶を持ち帰ったのがイギリスの紅茶の歴史の始まりだとされています。
そしてイギリスにおける紅茶の歴史の転機となったのは、チャールズ2世とキャサリン・オブ・ブラガンザの結婚でした。ポルトガルの王女であったキャサリン・オブ・ブラガンザは、大の紅茶好きで、彼女によって紅茶が宮廷や富裕層の間でトレンドな飲み物として定着していきました。そして、東インド会社が1664年にジャワ島から100ポンドの中国茶を輸入したことを皮切りに、イギリスにおいても紅茶の輸入が始まっていきます。
4. 紅茶への課税が招いた、羊の糞入り紅茶!?
イギリスでは、コーヒーハウス(いわゆる今で言うカフェのような場所)で提供されるようになった紅茶が、仕事や憩いの時間に集まっていた中・上流階級の男性の間で人気となります(女性は自宅で紅茶を楽しんでいました)。高価であった紅茶は労働者階級にはまだ普及していませんでした。
高額だった理由はその当時の茶葉に対する高い課税が理由で、1689年に導入された最初の課税は、当時の1ポンドに25ペンスで、これにより販売停止寸前まで追い込まるほどだったそう。その後、1692年に1ポンドあたり5セントまで引き下げられますが、1964年に紅茶の関税が撤廃されるまで、紅茶は常に課税の対象となっていました。
その高額な課税は、次第に紅茶の密輸や粗悪品の製造を生むようになっていきます。18世紀イギリスでの紅茶の需要の高まりも相まり、結果としてそれが密輸の拡大を招くことになってしまうのです。最初は知り合いに違法で紅茶を売る程度の小規模な取引だったものが、18世紀後半には組織的に行われるまでに発展します。また、税関や物品税で品質管理されていない不純物が混入した密輸茶が出回るようになりました。他の植物の葉や、すでに抽出済みの葉を再度乾燥させたものを茶葉に混ぜたり、色を本物の紅茶と似せるために羊の糞や毒のある炭酸銅などが入れられていたそう。
ことの重大さに気づいた政府は1784年に税を119%から12.5%まで大幅に引き下げ。それにより、合法的な紅茶が手に入るようになり、密輸は一気に収束していきました。
5. イギリスにおける紅茶貿易と消費の拡大
イギリスで紅茶が広まったもう一つの大きなきっかけは、1834年に東インド会社による対中国貿易の独占が終焉したことも背景にありました。それまでイギリスに輸入されていた紅茶の大半は中国産でしたが、東インド会社が中国の貿易独占権を失ったことを境に、今度はインドに白羽の矢を立て、紅茶栽培を始めたのです。そしてインドのアッサム地方を拠点に紅茶の栽培が盛んになっていきました。
1839年にようやく市場に出せるまでの品質の茶葉がインドでも栽培されるようになり、英国で初めてアッサム茶のオークションが開催されました。1858年、茶産業に熱心であったイギリス新政府が直接インドの茶葉を管理するようになり、お茶の栽培は増加、アッサム以外の地域にも拡大していきました。インドにおけるお茶の生産量は飛躍的に伸び、1888年にはインドからの紅茶の輸入量が初めて中国からの輸入量を上回るまでになりました。
また、東インド会社の貿易独占が撤廃された1834年以降、お茶の貿易は事実上、自由競争になりました。個の商人や船長がクリッパー(米国で生まれた高速の大型帆船)でお茶を輸入しお金を稼ぐようになり、いかに早く大量に輸送できるかを競う「クリッパー・レース」が盛んに行われました。しかし、スエズ運河が開通し、中国との貿易が蒸気船で行われるようになったことで、これらのレースは姿を消していきました。
消費する紅茶のほとんどが中国産であった1851年の一人当たりの年間消費量は当時の2ポンド以下でしたが、1901年には、インドや同じくイギリスの植民地であったスリランカ(当時はセイロン)から安価な輸入茶葉が入ってきたことを背景に、一人当たりの年間消費量は6ポンドを超えるまでに拡大。紅茶はイギリス人の生活の一部として定着していきました。
第一次世界大戦中は、この紅茶の重要性を認識していた政府が紅茶の輸入を管理して、人々が手頃な価格で入手できるようにしました。また第二次世界大戦中、再び政府の管理下に置かれ、1940年から1952年までの間は紅茶は配給制となっていたそうです。
1952年には、1706年から続いていたロンドン・ティー・オークションが再開。ロンドン・ティー・オークションは世界の紅茶産業の中心的存在になりますが、世界における通信手段の発達や紅茶生産国におけるオークションの増加により、20世紀後半になるとその重要性を失い、1998年6月29日の回を最後に終了します。
6. 現在にも続くイギリスでの紅茶文化
お茶のオークションが衰退すると、現在の私たちの暮らしの定番となっているティーバッグが登場します。ティーバッグは20世紀初頭にアメリカで発明され、イギリスで本格的に販売されるようになったのは1970年代に入ってからです。
イギリスは、大英帝国が崩壊した後もなお、英国企業によって世界の紅茶市場をリードし続け、英国ブランドの地位を確固たるものにし、今日でも英国人のみならず世界の人々から愛され続けています。
イギリスで楽しまれる紅茶の種類
現在、イギリスには約1,500種類のお茶が存在しますが、味も色もスタイルも多種多様。
インドのお茶
インドは世界の紅茶の12%を輸出する主要生産国のひとつ。英国で人気のあるお茶は下記の3つです。
- ダージリン:北インド産で、軽くて繊細のためアフタヌーンティーにぴったり。
- セイロンティー:ダージリンよりもやや強めで、香り高く、ややシャープな味が特徴。
- アッサム:ブレンドしても大丈夫な強めの紅茶。
また、イギリスやアイルランドでは、「ダージリン・オレンジ・ペコ」や「セイロン・ブロークン・オレンジ・ペコ」などの紅茶もあります。「オレンジ・ペコ」は、葉の大きさを(クオリティの高さ)を表しているもので、オレンジの味や香りがするわけではありません。
中国の茶
お茶の発祥の地 、中国は世界のお茶の18%を生産しています。
- ラプサン・スーチョン:中国茶の中でも最も有名なお茶で、福建省北部の丘陵地帯で生産されるものが最高品質とされています。スモーキーな香りと味が特徴です。
- 雲南:雲南省で作られる紅茶。アッサムに似た濃厚な味は、朝食に最適です。
この他にも、インドや中国をはじめとする各国の緑茶、白茶、アロマティーなど、さまざまな種類があります。
イギリス流・美味しい紅茶の飲み方
イギリスでの正しい紅茶の淹れ方については、個人個人スタイルがありますが、まず大事なのはティーバッグや粉末ではなく、必ずリーフティーを用意すること。
- ポットなどでおいしい水を沸騰させる。
- 沸騰したお湯を少しずつティーポットに入れ、回しながら全体を温めたらお湯を捨てる。
- 1杯あたり小さじ1杯のリーフティーを入れる。
- 沸騰したお湯をティーポットに注ぐ(お湯が沸騰していることが大切です)。
- 3~4分そのまま置いておきます。それ以上放置してしまうと濃く、煮詰まったような風味になってしまうので注意。
- 茶漉しを使って、清潔なティーカップにお茶を注ぐ。
いかがでしたでしょうか?今回はイギリスの紅茶が飲まれるようになった歴史から、お茶の種類、イギリス流の美味しい飲み方までをご紹介しました。
みなさんも、芳醇な香りを味わいながら、自分の好みのお茶を探してみてくださいね。
それではまた。