こんにちは。SATOMIです。
今回はロンドンの美術館、ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ(RA)の特別展、「Tracey Emin / Edvard Munch The Loneliness of the Soul (トレーシー・エミン / エドヴァルド・ムンク 魂の孤独)」に行ってきました。
みなさん、トレーシー・エミンというアーティストを知っていますか?
「叫び」で有名なエドヴァルド・ムンクは知っていましたが、彼女についてはこの特別展に行くまで知りませんでした。なので今回の記事では、展示会のレポートと共に、トレーシー・エミンについて、彼女とムンクとの関係性についても色々まとめてみたいと思います。
まず最初にRA(ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ)が今回の特別展を撮影した彼女のインタビュー動画を見てみて下さい。
トレーシー・エミンについて
イギリスの現代アーティスト、トレーシー・エミン。直感的で高い表現力を持った彼女の作品は、愛、欲望、喪失、悲しみなどをテーマし、絵画、ドローイング、写真、彫刻、ネオンなど作品の種類は多岐に渡ります。
10代の頃の二度のレイプや、流産、母の喪失、自殺未遂、絶え間なく悩まされる不眠症、そして2020年には膀胱癌が発覚し膀胱、子宮、卵巣、尿道、結腸や膣の一部などを摘出する大手術をするなど、彼女の人生はまさに波乱万丈であり、エミンはこれまでの経験やそこでの強い感情を作品を通じて開示しています。
彼女の有名なインスタレーション作品、「Everyone I Have Ever Slept With 1963-95」(1995年発表、2004年に解体)では、彼女がベッドを共にしたすべての人の名前がテントの内側に縫い付けられており、彼女の感情的な過去を率直に記録、表現し話題を呼びました。
また、1998年、エミンは、彼女の最も象徴的な作品として知られる「My Bed」を制作。多くの問題を抱えていた時期を経て、彼女自身のベッドを展示したこの作品は、感情の変化を淡々と垣間見せ、現実の汚れた要素をありのままに公開しました。再生された木材や拾ってきた材料で、崩壊寸前のもろい構造物として組み立て、彼女の故郷であるイギリスの東部、マーゲートの海岸の桟橋や小屋、潮見表などの風景や構造物を参考にして作られました。
近年では、絵画とブロンズ彫刻を中心に、「戦いの場」としての身体を表現した作品を制作。表情豊かな具象画の中で、彼女は引き続き苦悩や高揚感、痛みの瞬間を表現しています。絵画に描かれる裸体の人物は、感情の動揺を記録するような緊迫感を与える力強いタッチで描かれる一方、絵画上のドリップや消えかかっているラインは、彼女自身の感情に打ちのめされ、水没してしまったような感覚を表現しているそうです。(詳しくは↓で実際の作品を見てみて下さい)
トレーシー・エミンが敬愛するエドヴァルド・ムンク
10代の頃、デヴィッド・ボウイの大ファンであったというトレーシー・エミンは、15歳のときに、友人からボウイのアルバム『Heroes』と『Lodger』のジャケットは、オーストリアの画家エゴン・シーレの絵からインスピレーションを受けていると聞き、当時エゴン・シーレのことを知らなかったものの、次第に興味を持つようになります。故郷のマーゲートにあるアルビオン・ブックショップに行き、シーレに関する本がないかと尋ね手渡されたのが、シーレだけでなく、オスカー・ココシュカやエドヴァルド・ムンクの絵が含まれていた表現主義の本でした。彼女はそれをきっかけにムンクを知り、彼に魅了されていきます。
美大の学生時代には、エミンはムンクの絵画や版画を制作していき、最終学年の卒業論文のテーマは『私の男、ムンク』という作品を完成させました。
以降も、ムンクの作品をオマージュした作品などを発表していき、彼女がどれほどムンクを敬愛し、また影響を受けてきたのかをうかがい知ることができます。
ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ特別展の内容
2020年に癌が発覚し手術を行ったエミン。彼女自身、これが最後の展示会になると思ったという今回のRAでの特別展では、エミン自身がムンクの作品を選び、それに共鳴する彼女の作品が展示されています。
RAの動画でエキシビションのバーチャルツアーが見れるのでそちらで作品を見てみて下さい。
作品を見てみていかがでしたでしょうか?展示会の内容が気に入った方は、エキシビションをまとめた本が日本のアマゾンでも購入できるので是非チェックしてみて下さい。
Tracey Emin / Edvard Munch. The Loneliness of the Soul
↓は私が撮影した、展示会の作品の一部の紹介です。
いかがでしたでしょうか?
波乱に満ちた人生をアートを通して率直に表現する彼女のスタイル、また作品にこめられたメッセージや彼女の苦悩をエドヴァルド・ムンクの作品と呼応させながら、感じ取ることができたのではないかと思います。
ぜひ彼女の今後の作品もチェックしてみていって下さいね。
ほかの展覧会のレポートについてはExhibitionでチェックしてみてください。
それではまた次のエキシビションレポートまで。
展示会訪問日:2021年7月24日